
うちに犬が来てから、リビングに人が集まるようになった。
前は夕飯が終わったら各自自分の部屋に引きこもるのが当たり前だったんだけど、今は誰かしらがソファでゴロゴロしながら犬を撫でてる。で、そこに別の誰かが「あ、いた」みたいな顔して寄ってくる。犬を中心に家族が自然と集まってくるんだよね。最初は偶然かと思ってたけど、もう半年以上続いてるから、これはもう習慣になってる。
犬の名前はマロン。柴犬の女の子で、うちに来たのは去年の秋ごろ。ペットショップじゃなくて知り合いのブリーダーさんから譲ってもらったんだけど、初日からもう家族全員メロメロ。父親なんて「俺は犬派じゃない」とか言ってたくせに、今じゃ毎朝散歩に連れて行くのが日課になってる。母はマロン用のInstagramアカウント作って熱心に更新してるし、弟は学校から帰ってくるなり「マロンー!」って叫びながら抱きつく。私? 私は一番冷静なつもりだったけど、気づいたらスマホのカメラロールがマロンの写真で埋まってた。
面白いのは、マロンを話題にすると家族の会話がやたら盛り上がることなんだよね。「今日マロンが散歩中に変な歩き方してた」とか「マロンが夢見てたのか寝言言ってた」とか、そんなどうでもいい報告が飛び交う。で、それに対してみんなが「え、マジで?」「見たかった!」って反応する。こんなに家族で会話してたっけ? ってくらい喋るようになった。
ちなみに私、去年の夏にハマってたドラマがあって、最終回だけ録画し忘れて結末知らないまま終わったんだけど。あれ、今思い出しても悔しい。配信でも見られなくて、ネタバレ怖くてSNSも見られなくて。まあ今となってはどうでもいいけど、当時は本気で凹んでた…だけど。
話を戻すと、マロンがいることで家族の役割分担も自然とできてきたんだよね。父が朝の散歩、母が食事の管理、弟が遊び相手、私が夜の散歩と水の交換。誰かが「やって」って指示したわけじゃなくて、気づいたらそうなってた。で、誰かができなかった日は他の人が自然とカバーする。「今日マロンの散歩行った?」「あ、まだ」「じゃあ俺行くわ」みたいな感じで。こういうのって、ペットがいなかったら絶対なかった会話だと思う。
週末の過ごし方も変わった。前は家族バラバラに予定入れてたけど、今は「マロンとどこか行く?」が合言葉になってる。近所のドッグランとか、ペット同伴OKのカフェとか、川沿いの遊歩道とか。特別なことしてるわけじゃないんだけど、マロンがいるだけで何か楽しい。この前なんて、父が「ペットグッズ専門店のアウトレットがあるらしい」って情報仕入れてきて、家族全員で車で1時間かけて行ったからね。で、結局マロンより人間の方がはしゃいでた。
食事の時間も変わったかも。前は各自好きな時間に食べることも多かったんだけど、今はなるべく揃って食べるようになった。理由は単純で、マロンが食卓の下で待ってるから。あの期待に満ちた目で見つめられると、一人で先に食べるのが申し訳なくなるんだよね。で、家族が揃うと自然と会話が生まれる。「今日学校でさ」とか「会社でこんなことあって」とか、前は誰も聞いてなかったような話を、マロンを撫でながらみんなで聞く。
マロンは別に何か特別なことをするわけじゃない。ただそこにいるだけ。でも、その「いるだけ」が家族の空気を変えたんだと思う。共通の話題ができたし、共通の責任ができたし、共通の楽しみができた。ペットを飼うって、世話が大変とか、お金がかかるとか、そういう側面ばかり強調されがちだけど、うちの場合は完全にプラスの方が大きい。
正直、最初は「本当に飼えるのかな」って不安もあった。誰が世話するんだ、途中で飽きたらどうする、みたいな。でも実際に飼ってみたら、そんな心配は杞憂だった。というか、世話が「負担」じゃなくて「楽しみ」になってるんだよね。マロンのために何かするのが、自然と家族のコミュニケーションになってる。
最近、弟が「マロンがいなかった頃ってどんな感じだったっけ?」って聞いてきたんだけど、私も思い出せなかった。まだ半年ちょっとしか経ってないのに、マロンがいる生活が当たり前になりすぎて、前の生活が遠い昔みたいに感じる。
ペットとの生活って、こういうことなのかもね。特別なイベントがあるわけじゃないけど、日常がちょっとだけ温かくなる感じ。家族みんなで同じものを可愛がって、同じように心配して、同じように笑う。それだけのことなんだけど…それがいいんだよな、きっと。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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