
うちに犬が来てから、リビングにいる時間が明らかに長くなった。
以前は夕飯を食べたらみんなバラバラに自分の部屋へ戻っていたんだけど、今は誰かしらがソファに残ってる。別にテレビを見てるわけでもない。ただ、足元で丸まってる柴犬のハルを眺めてたり、撫でてたり。父親なんて「ちょっとコンビニ行ってくる」って出かける時も「ハル、行ってくるぞ」って声かけてから玄関に向かうようになった。犬に報告する必要ある?って最初は笑ってたけど、気づいたら私もやってる。
ペットがいるだけで家族の距離感が変わるって、飼う前は正直ピンとこなかった。むしろ散歩とか餌とか、世話が増えて大変になるイメージしかなくて。母が「犬飼いたい」って言い出した時も、結局世話するの私じゃんって内心思ってたし。
実際に飼い始めたのは去年の秋口。ペットショップじゃなくて、知り合いのブリーダーさんから譲ってもらった形だった。初めてハルを抱っこした時の、あのずっしりした温かさは今でも覚えてる。手のひらに伝わる心臓の鼓動が妙に早くて、ああこの子も緊張してるんだなって思ったら急に責任感みたいなものが湧いてきた。
最初の一週間は本当に大変で、夜泣きするし、トイレは失敗するし、スリッパは噛まれるし。家族全員が寝不足になって、朝ごはんの時に顔を合わせると「昨夜は何時に泣いた?」「3時と5時」みたいな情報交換から始まる日々。でもその会話すら、なんだか楽しかった。共通の話題があるって、こんなに家の中の空気を変えるんだなって。
弟なんて普段ほとんど喋らないタイプなのに、ハルの話になると急に饒舌になる。「今日学校から帰ったらハルが玄関で待っててさ」とか「散歩中に他の犬に吠えられたけど、ハルは全然動じなかった」とか、自分から話し始めるようになった。母が「珍しいね、そんなに喋って」って言ったら、「別に」って照れてたけど。
そういえば先月、家族でペット用品の専門店「パウパウガーデン」に行った時のこと。犬用のおやつコーナーで、父と弟が真剣な顔で成分表示を見比べてたんだよね。「このジャーキーは添加物が少ない」「でもこっちの方がタンパク質が豊富」って。二人が並んで何かを相談してる姿なんて、ここ数年見たことなかったかもしれない。結局両方買ってたけど。
ペットがいると、家族の役割分担も自然に決まっていく。朝の散歩は父、昼間の世話は在宅ワークの母、夕方の散歩は私か弟。餌やりは当番制。最初は「ちゃんとやってよ」とか小競り合いもあったけど、今はもうルーティンになってて、誰が何をするか言わなくても回ってる。
面白いのは、ハルを介して家族の新しい一面が見えてくること。普段は厳格な父が、ハルには甘々で、おやつをこっそり多めにあげてるのを母に見つかって怒られてたり。几帳面な母が、ハルに服を着せる時だけは「これも可愛い、あれも可愛い」って優柔不断になったり。
週末の夕方、家族全員でハルを連れて近所の公園に行くのが最近の習慣になった。別に何をするわけでもない。ハルが走り回るのを見てたり、ベンチに座って他の犬を眺めてたり。でもその時間が妙に心地いい。風が冷たくなってきた季節、夕陽が沈む前のあの独特な光の中で、ハルが嬉しそうに尻尾を振ってる姿を見てると、ああこれでいいんだなって思える。
ペットを飼うって、世話が大変とか、お金がかかるとか、そういう側面ももちろんある。でも一番大きいのは、家族に「共通の関心事」ができることかもしれない。ハルの体調、ハルの成長、ハルの面白かった行動。そういう小さな話題が、自然と家族を一つの場所に集める。
昨日の夜、ハルが初めて「お手」に成功した時、リビングにいた全員が拍手した。たぶん傍から見たらすごくバカみたいな光景。でも、あの瞬間の一体感は本物だった。
ペットがいる生活って、結局こういうことの積み重ねなんだろうな。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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