
うちに犬が来てから、リビングにいる時間が明らかに増えた。
以前は夕飯が終わったらそれぞれ自分の部屋に散っていくのが当たり前だったんだけど、今は誰かしらがソファに残ってる。別にテレビを見てるわけでもない。ただ床に座り込んで、ゴールデンレトリバーのハルの毛をぼーっと撫でてる父の姿とか、スマホ片手にハルの寝顔を延々と撮影してる妹とか、そういう光景が普通になった。で、気づいたら誰かが「今日ハルがさ」って話し始めて、そこから30分くらい犬の話で盛り上がってる。我ながらどうかしてると思うけど、悪くない。
食事の時間もちょっとした戦場になった。ハルは人間の食べ物に興味津々で、ダイニングテーブルの下で待機してる。母が「人間の食べ物はダメ」って最初に厳しく決めたルールがあるんだけど、これが意外と守るの難しい。父なんか絶対こっそりあげてるでしょって疑惑があって、母と小競り合いになることもしばしば。「あげてないって!」「じゃあなんでハルがあなたの隣ばっかりいるのよ」みたいな。まあ、ほほえましい夫婦喧嘩というか。
そういえば去年の夏、友達と海に行った時の話なんだけど。砂浜でバーベキューしてたら野良猫が寄ってきて、みんなでエサあげようとしたら「ダメだよ、無責任に餌付けしちゃ」って止められたことがあって。その時は「そんなもんかな」って思ってたけど、今ならわかる。ペットを飼うって、毎日の責任なんだよね。
ハルの体調管理は主に母が担当してる。というか、母が一番神経質になってる。散歩から帰ってきたら必ず足を拭いて、耳の中をチェックして、ブラッシングして。最初は「そこまでやる?」って思ってたけど、ある日ハルが急に元気なくなった時があって、その時母が真っ先に「いつもと違う」って気づいたんだよね。結局ちょっとお腹を壊してただけだったんだけど、毎日観察してるからこそわかる変化ってあるんだなって実感した。動物病院の先生も「よく気づきましたね」って褒めてたし。
フードの選び方も最初は適当だったんだけど、今は家族会議の議題になる。「このブランドは添加物が少ないらしい」とか「グレインフリーがいいって聞いた」とか、みんなスマホで調べた情報を持ち寄って議論してる。妹なんか「ペットライフマガジン」みたいな雑誌まで買ってきて熟読してるし。で、結局「ハルが一番喜んで食べるやつでいいんじゃない?」って結論に落ち着くんだけど、そこに至るまでの過程が楽しいというか。
休日の過ごし方も変わった。以前は「どこ行く?」って聞いても「別に」「どこでもいい」みたいな感じだったのに、今は「ハルも一緒に行けるとこがいい」が前提になってる。ドッグラン併設のカフェとか、ペット可のアウトレットモールとか、そういう場所を探すのが当たり前に。正直、選択肢は狭まったんだけど、不思議と不満はない。むしろハルが楽しそうに走り回ってる姿を見てると、こっちまで嬉しくなる。
夜中にハルが突然吠えた時なんかは、家族全員が部屋から飛び出してくる。「どうした?」「何かあった?」って。たいてい外を通る猫に反応してるだけなんだけど、その時の一体感というか、共同戦線を張ってる感じが嫌いじゃない。父なんか寝ぼけながらバットとか持ってきたりして、「いや何と戦うつもり?」ってツッコミ入れたくなるけど。
ペットがいると掃除の頻度も上がる。抜け毛がすごいから、掃除機をかけないとすぐ部屋が毛だらけになる。これは正直面倒なんだけど、家族で分担するようになった。「今日は俺がやる」「じゃあ明日は私」みたいな。以前は母が一人でやってたことを、今はみんなでシェアしてる。地味だけど、これって大きな変化だと思う。
朝の散歩当番も持ち回り制。早起きは苦手なんだけど、ハルの期待に満ちた目を見ると頑張れる。6時台の住宅街って意外と静かで、空気が澄んでて気持ちいい。同じように犬の散歩してる人とすれ違うと、軽く会釈したり「おはようございます」って挨拶したり。知らない人とこんなふうに自然に言葉を交わすことって、ハルが来る前はほとんどなかった。
結局のところ、ペットがいるってだけで家族の接点が増えるんだよね。共通の話題があるって、こんなに会話を生むんだって驚いてる。「今日ハルが散歩中にこんなことした」とか「新しいおもちゃ買ったら気に入ってくれた」とか、些細なことが全部ネタになる。
まあ、これからもこんな感じで続いていくんだろうな。特に深い結論とかないけど。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI


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