ペットが子供に教えてくれる、言葉にならない何か

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うちの犬が娘の足をペロペロ舐めたとき、娘は笑うより先に「くすぐったい」って顔をしわくしわにした。

ペットと子供の関係って、正直なところ最初から順風満帆じゃなかった。犬を飼い始めた当初、当時3歳だった娘は怖がって近づこうともしなかったし、私も「ほら、優しく撫でてごらん」なんて無理やり触らせようとして、逆に娘を泣かせてしまったことがある。今思えば、あれは完全に親の押し付けだったんだよね。子供には子供のペースがあるし、犬には犬の気分がある。それを無視して「仲良くしなさい」って命令したって、うまくいくはずがない。

娘が犬に自分から近づいたのは、飼い始めて2ヶ月くらい経った夏の夕方だった。リビングの窓から差し込む西日がオレンジ色で、犬が床に寝そべってうとうとしていたんだけど、娘がそっと這いながら近づいていって、犬の耳をちょんと触った。犬は薄目を開けただけで、特に反応しなかった。それだけ。でもそれが娘にとっては大きな一歩だったみたいで、それから毎日少しずつ距離が縮まっていった。私が教えたわけでも、促したわけでもなく、二人が勝手に見つけた距離感。

子供って、ペットと接するときに不思議な優しさを見せる。

娘は犬が水を飲んでいるとき、じっと横で見守っているし、犬がおもちゃを咥えて持ってくると、自分の遊びを中断してでも投げてあげる。「ママ、ワンちゃんがこれで遊びたいって」って言うんだけど、正直犬がそこまで明確に意思表示しているかは謎なんだよね。でも娘の中では、犬の気持ちが「わかる」らしい。私には聞こえない声が、娘には聞こえているのかもしれない。

そういえば、前に友達の家に遊びに行ったとき、そこの家には猫がいて、娘はずっとその猫を追いかけ回していた。友達が「あんまり追いかけると嫌がるよ」って注意したんだけど、娘は「大丈夫、遊びたいんだよ」って言い張ってた。結局、猫は家具の下に隠れてしまって、娘はしょんぼり。うちに帰ってから「ワンちゃんは逃げないね」ってぽつりと言ったのが、なんだか印象に残ってる。

ペットとのふれあいが子供に与える影響って、教育本には「責任感が育つ」とか「思いやりの心が芽生える」とか書いてあるけれど、実際に見ていると、もっと曖昧で、もっと言葉にしづらいものだと思う。娘は犬の世話を手伝うわけでもないし、散歩だって「行きたくない」って言う日のほうが多い。それでも、朝起きたら真っ先に犬の様子を見に行くし、幼稚園から帰ってきたら「ただいま」より先に犬の名前を呼ぶ。

ある日の夕食後、娘が犬の背中に顔を埋めて泣いていたことがあった。幼稚園で何かあったらしいんだけど、詳しくは教えてくれなくて、ただ犬にぎゅっとしがみついていた。犬は迷惑そうでもなく、ただじっとしていた。私が「どうしたの?」って聞いても答えなかったけど、10分くらいそうしていたら、娘はすっきりした顔で立ち上がって「お風呂入る」って言った。犬が何をしたわけでもない。でも、そこに犬がいたことが、娘にとっては意味があったんだと思う。

最近、娘は犬に絵本を読んであげるようになった。犬が理解しているかは不明だけど、娘は真剣に、ページをめくりながら声に出して読んでいる。「ワンちゃん、ちゃんと聞いてる?」って確認しながら。犬は時々あくびをしているけれど…まあ、それも含めて二人の時間なんだろうね。

ペットと子供のふれあいって、結局のところ、何かを教えるとか、何かを学ぶとかじゃなくて、ただそこにいる、っていうことなのかもしれない。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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