ペットが教えてくれた、子供が変わる瞬間の話

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うちの犬が来たのは、息子が4歳の春だった。

柴犬のミックスで、名前はコロ。ありきたりすぎて親戚に笑われたけど、息子が決めたから仕方ない。最初の一週間は正直言って地獄で、夜鳴きするわ、トイレは失敗するわで、私も夫も寝不足でフラフラだった。息子はというと、最初の二日くらいは「かわいい!」って大騒ぎしてたのに、三日目には飽きたのか、いつものようにゲームばっかり。ペットを飼うって決めたとき、世話は自分でやるって約束したじゃん…って何度心の中で呟いたことか。

変化が見えたのは、たぶん二ヶ月くらい経った頃だったと思う。梅雨に入って、じめじめした午後。私が洗濯物を取り込んでいたら、リビングから息子の声が聞こえてきた。「コロ、お座り。お座りだよ」って、何度も何度も繰り返してる。覗いてみたら、息子が床に座り込んで、コロの目をじっと見つめながら、手でジェスチャーしてた。コロはというと、全然言うこと聞かずに尻尾振って遊ぼうとしてるんだけど。

でもね、息子は諦めなかった。

それまでの息子って、何かがうまくいかないとすぐ癇癪起こして、「もうやらない!」ってその場から逃げちゃうタイプだったんだよね。幼稚園の工作も途中で投げ出すし、パズルも完成する前に飽きちゃう。私も夫も、この子の集中力どうにかならないかなって、密かに心配してた。ちなみに私自身も子供の頃そうだったから、遺伝かなって思ってたけど。

ある日の夕方、息子が「ママ、見て!」って叫ぶから行ってみたら、コロがちゃんとお座りしてた。息子の顔、今でも忘れられない。目をキラキラさせて、「できた!コロができたよ!」って。その日の夜ご飯のとき、息子は珍しく自分から「今日ね、コロにお座り教えたんだ」って話し始めて、どれだけ大変だったか、どうやって教えたか、延々と語ってた。

食事の準備も変わった。最初は私がコロのご飯を用意してたんだけど、いつの間にか息子が「僕がやる」って言い出して、朝と夜、決まった時間になると自分から動くようになった。計量カップでドッグフードを測って、お水を入れ替えて。たまに水がこぼれて床がびしょびしょになることもあったけど、自分で雑巾持ってきて拭いてた。

散歩に行くときの息子の顔も、なんか違うんだよね。近所の公園まで、コロのリードを握りしめて、誇らしげに歩いてる。すれ違う人に「こんにちは」って挨拶するようになったのも、コロのおかげかもしれない。犬連れてると、知らない人も「かわいいね」って声かけてくれるから、自然と会話が生まれる。人見知りだった息子が、自分から「コロっていうんです」って話しかけるようになった。

去年の夏、息子が小学校に上がってすぐの頃。学校から帰ってきた息子の様子がおかしくて、聞いても「別に」って言うだけ。でもその日、息子は真っ先にコロのところに行って、コロの首に顔を埋めて、しばらくじっとしてた。コロは何も言わずに、ただそこにいて、息子の頭を舐めてた。

私は声をかけなかった。

しばらくして息子が顔を上げたとき、目が赤かったけど、なんとなく落ち着いた表情になってた。「コロって、何も聞かないから好き」って、ぽつりと言った。その言葉が妙に心に残ってる。大人はすぐ「どうしたの?」「何があったの?」って聞いちゃうけど、コロはただそばにいるだけ。それが、息子には必要だったんだろうな。

最近は、息子が自分で調べてコロの健康管理をするようになった。「柴犬は皮膚が弱いから、ブラッシング大事なんだって」とか、「散歩は一日二回、30分ずつがいいらしい」とか、スマホで検索した情報を私に教えてくれる。この前なんて、「ペットフードのラベルの見方」みたいな記事を印刷して、「今のフード、添加物多いかも」とか言い出した。小学二年生が添加物って…成長したなあと思う反面、ちょっと笑っちゃったけど。

責任感っていうのかな、それとも思いやりっていうのか。言葉にするとありきたりになっちゃうけど、コロと暮らすようになって、息子の中に何かが芽生えたのは確か。自分より小さくて、弱い存在を守るっていう感覚。誰かのために動くっていう習慣。

今朝も、目覚まし時計が鳴る前に息子が起きてきて、コロの散歩に行った。休日の朝7時だよ?以前なら絶対に起きなかったのに。

窓から二人の後ろ姿を見ながら、私はコーヒーを飲んでた。息子の歩幅とコロの歩幅が、なんとなく合ってきてる気がする。これからもきっと、二人は一緒に大きくなっていくんだろうな…なんて思ったりして。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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