ペットが教えてくれた、子供の成長に必要だったもの

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うちの犬が娘の足を舐めたとき、私は台所で皿を洗っていた。

リビングから聞こえてきたのは、くすぐったそうな笑い声。5歳になったばかりの娘が、床に座り込んで柴犬のマロと向き合っている。マロの舌がぺろぺろと小さな足の裏をなめるたび、娘は身をよじって笑う。「やめて〜」って言いながら、全然逃げようとしない。あの光景を見て、ああこれがペットとの暮らしなんだって思った。

正直に言うと、犬を飼うことには反対だった。世話が大変だし、お金もかかる。何より、子供が飽きたらどうするんだって。でも妻が「情操教育にいいから」って押し切って、気づいたら保護犬の譲渡会に行ってた。そこで出会ったのがマロ。当時2歳のオスで、前の飼い主が引っ越しで手放したらしい。娘が「この子がいい」って言った瞬間、妻の目がキラキラしてて、もう私に拒否権はなかった…だけど。

最初の一週間は地獄だった。

マロは夜中に遠吠えするし、娘は興奮して寝ないし、私は寝不足で会社でミスを連発。トイレのしつけもうまくいかなくて、リビングのカーペットに染みができた。あれ、クリーニング代が結構かかったんだよね。娘は「マロちゃんかわいそう」って怒られるマロをかばうんだけど、散歩には行きたがらない。結局、朝の散歩は私の仕事になった。朝6時に起きて、眠い目をこすりながら近所を歩く。夏の早朝は意外と気持ちよくて、アスファルトがまだ冷たくて、どこかからパンを焼く匂いがしてきたりする。

娘がマロの世話を本気でやり始めたのは、幼稚園で「お当番」が始まってからだった。クラスでウサギの世話をする係になって、急に責任感が芽生えたらしい。「マロのごはんも私があげる」って宣言して、毎朝ドッグフードを計量カップで測るようになった。最初は床にこぼしまくってたけど、一ヶ月もすると手つきが慣れてきた。マロも娘がごはんをくれるって分かって、夕方になると娘の後をついて回るようになった。

ペットとの暮らしって、教科書には載ってないことばかり教えてくれる。

たとえば、マロが体調を崩したとき。ある朝、マロが朝ごはんを食べなかった。いつもはガツガツ食べるのに、フードの前でじっと座ってる。娘は「マロちゃん、どうしたの?」って心配そうに覗き込んで、私に「病院に連れて行こう」って言った。動物病院の待合室で、娘はマロを膝に乗せて頭を撫で続けてた。診察の結果は軽い胃腸炎で、薬をもらって帰ったんだけど、あの日の娘の真剣な顔は今でも覚えてる。誰かを心配するって、こういう顔をするんだなって。

そういえば、去年の夏に妻の実家に帰省したときのことを思い出した。マロをペットホテルに預けるか、一緒に連れて行くかで家族会議になって、結局連れて行くことにした。車で4時間の道のり、マロは後部座席のケージの中で大人しくしてた。娘はずっとマロに話しかけてて、「もうすぐ着くよ」「頑張ってね」って。実家に着いたら、マロは庭を走り回って、娘も一緒に走って、二人とも泥だらけになった。妻の母が「洗うの大変ね」って苦笑いしてたけど、娘の笑顔を見たら文句も言えなかった。

子供って、ペットと接するときに素直になる気がする。

学校で嫌なことがあった日、娘は帰ってきてもあまり話さない。でもマロのそばに座って、もふもふの毛に顔をうずめてる。マロは何も言わないけど、ただそこにいる。それだけで娘の表情が少しずつ柔らかくなっていく。私が「どうしたの?」って聞いても「別に」って返ってくるのに、マロには全部話してるみたい。犬は秘密を守ってくれるから。

最近、娘がマロに本を読み聞かせてる。音読の宿題をマロの前でやるようになって、マロは娘の足元で寝そべって聞いてる。たぶん内容は分かってないと思うけど、娘の声に反応して尻尾を振ったりする。「マロちゃん、ちゃんと聞いてる?」って娘が聞くと、マロは首を傾げる。その仕草がまた可愛くて、娘は嬉しそうに次のページをめくる。

ペットを飼うって、確かに大変だ。お金もかかるし、時間も取られる。旅行の計画も制限されるし、家の中も毛だらけになる。でも、娘がマロの頭を撫でながら「大好き」ってつぶやく声を聞くと、この選択は間違ってなかったって思う。

来月、マロは7歳になる。娘は10歳。二人が一緒に過ごした時間は、もう5年になる。これからも、きっと色んなことがある。マロが年を取って、娘が大人になって、それぞれの時間が流れていく。

今日も、リビングから笑い声が聞こえてくる。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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