私たちの家に小さな命が加わったのは、息子が5歳になった春のことでした。保護猫カフェで出会った茶トラの子猫は、最初は人見知りで隅っこに身を寄せていましたが、息子の優しく穏やかな声に少しずつ心を開いていきました。
その日から私たちの生活は、温かな色合いに彩られていきました。「モカ」と名付けられた子猫は、日に日に家族との距離を縮めていき、特に息子とは特別な絆を育んでいきました。朝は息子の目覚まし代わりに布団に潜り込んできて、夜は息子の枕元で丸くなって眠る。そんな何気ない日常の中で、息子の中に新しい感情が芽生えていくのを感じました。
「ママ、モカがご飯食べてないから、僕も待ってから食べる」
「モカが怖がってるから、優しく話しかけないとね」
そんな息子の言葉に、私は小さな成長を見る度に胸が温かくなりました。
生き物の世話をすることは、子供にとって大切な学びの機会となります。餌やりや水の取り替え、トイレの掃除など、決められた時間に必要なことをする責任感。相手の気持ちを考えて接する思いやりの心。そして何より、unconditional love(無条件の愛)を体験することができます。
息子は休日になると、モカのためにおもちゃを手作りするようになりました。段ボールを切って猫ハウスを作ったり、毛糸で遊び道具を編んだり。失敗しても何度も挑戦する姿に、創造性と忍耐力が育まれていくのを感じました。
特に印象的だったのは、息子が幼稚園で友達にモカの話をする時の生き生きとした表情です。「うちのモカね、こんなことができるんだよ」と誇らしげに話す姿に、愛情と自信が満ち溢れていました。ペットとの暮らしは、コミュニケーション能力の向上にも一役買っていたのです。
モカが体調を崩した時には、息子なりに看病をしました。「大丈夫だよ、モカ。僕が守ってあげるからね」と小さな手でそっと撫でる姿に、私は涙が出そうになりました。獣医さんの指示を守り、薬を飲ませる時も頑張って手伝う息子。その経験は、命の大切さと責任感を深く理解する機会となりました。
季節が巡り、息子は小学生になりました。学校での出来事をモカに話すのが日課となり、時には悩みも打ち明けているようです。モカは黙って息子の話に耳を傾け、時折やさしく鳴いて応えます。そんな何気ない対話の中で、息子の心は豊かに育まれていきました。
ペットとの生活は、子供の感情教育にも大きな影響を与えます。喜びや楽しさだけでなく、時には我慢や譲り合いも必要です。モカが気分よく過ごせるように、大きな声を出すのを控えたり、走り回るのを我慢したり。そうした経験は、他者への配慮や自己コントロールの力を育てていきました。
休日の朝、息子とモカが窓辺で日向ぼっこをする光景は、私の大切な宝物です。本を読む息子の膝の上で、モカがゴロゴロと喉を鳴らす。そんな穏やかな時間の中で、息子は少しずつ、でも確実に成長していきました。
最近では、近所の小さな子供たちにモカとの接し方を教えてあげる息子の姿も見られるようになりました。「優しく撫でるんだよ」「急に後ろから触ると驚くから、前から声をかけてね」と、自分の経験を活かしてアドバイスする姿は、まるで小さな先生のようです。
ペットとの生活は、時として予期せぬ出来事の連続です。しかし、その一つ一つが貴重な学びの機会となり、子供の心を豊かに育てていきます。モカと過ごす時間は、息子にとって何物にも代えがたい成長の糧となっているのです。
夕暮れ時、リビングでくつろぐ私たち家族。宿題を終えた息子の傍らでまどろむモカ。テレビの音が流れる中、時折聞こえる息子の笑い声とモカの鳴き声が心地よく響きます。この何気ない日常の中で、確かな絆が育まれ、小さな命との共生を通じて、息子は優しさと強さを身につけていくのでしょう。
これからも、モカとの生活を通じて息子が学び、成長していく姿を見守っていきたいと思います。家族の一員としてのペットとの暮らしは、子供の心に永遠に残る、かけがえのない宝物となることでしょう。そして、この経験は必ず息子の将来に、温かな光となって照らし続けることでしょう。
役職名:UETSUJI TOSHIYUKI
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