我が家に小さな命が加わったのは、息子が4歳になった春のことでした。保護猫カフェで出会った茶トラの子猫は、人懐っこい性格で、息子と目が合った瞬間から特別な絆が生まれたように感じました。
「モモちゃんって名前にしたい！」息子が満面の笑みで提案した名前は、その子猫の柔らかな毛並みの色からインスピレーションを受けたものでした。こうして、モモは正式に私たちの家族の一員となりました。
最初の数日間、息子はモモの世話に夢中でした。餌やりの時間を覚え、水皿が空になっていないかこまめにチェックし、トイレの掃除も進んで手伝おうとします。もちろん、4歳児にできることには限りがありますが、その一生懸命な姿に、私たち親も心を打たれました。
モモとの生活が始まって1ヶ月が経つ頃、息子の中に小さな変化が現れ始めました。それまで「いや！」と駄々をこねることが多かった片付けも、「モモちゃんが困っちゃうから」と自発的にするようになったのです。おもちゃを床に散らかしたままにすると、モモが踏んでしまうかもしれない。その気づきが、息子の行動を変えていったのでした。
特に印象的だったのは、息子が風邪で熱を出した時のことです。普段は元気いっぱいの息子が、ぐったりとベッドで横になっていると、モモは必ずそばに寄り添っていました。時には息子の枕元で静かに眠り、時には優しく前足で息子の手を触れるように。その様子を見ていると、動物たちの持つ不思議な癒しの力を実感せずにはいられませんでした。
休日の朝は、モモと息子の特別な時間です。まだ私たち親が寝ている間から、リビングでは二人の密やかな遊びが始まっています。猫じゃらしを使った追いかけっこや、ボールを転がして遊ぶ様子は、まるで親友同士のよう。息子の笑い声とモモの嬉しそうな鳴き声が、家中に幸せな空気を運んでいきます。
息子は徐々にモモの気持ちを理解するようになっていきました。「モモちゃん、今眠そうだから遊ばない方がいいね」「お腹空いてないのに餌あげちゃダメだよね」といった言葉が、自然と出てくるようになったのです。他者への思いやりの心が、ペットとの暮らしを通じて育まれていく様子は、親として何よりも嬉しい発見でした。
モモが来てから1年が経ち、息子は年長さんになりました。幼稚園での出来事を、真っ先にモモに話して聞かせる習慣ができています。時には悲しいことや辛いことも、モモの前では素直に表現できるようです。黙って話を聞いてくれるモモは、息子にとって最高の相談相手となっているようでした。
また、責任感も着実に育っています。「お留守番のモモちゃんのために、水とごはんチェックしなきゃ」と、外出前には必ず確認するようになりました。小さな命を預かることの大切さを、息子なりに理解し始めているのでしょう。
ペットとの暮らしは、子供の感性を豊かにする素晴らしい機会を与えてくれます。生き物への愛情、責任感、思いやりの心。これらは全て、日々の何気ない触れ合いの中で自然と育まれていくのです。
最近では、息子が幼稚園で飼育している うさぎの世話も率先して行うようになりました。モモとの生活で培った優しさと責任感は、他の場面でも確実に活かされています。教諭からも「お世話上手」と評価され、息子の自信にもつながっているようです。
夕暮れ時、窓辺で外を眺めるモモの傍らで、息子が絵本を読む姿は私の大好きな風景の一つです。時折モモの頭を優しく撫でながら、物語の世界に浸る息子。その穏やかな表情に、子供の心の成長を感じずにはいられません。
これからも、モモとの生活を通じて、息子はさまざまなことを学んでいくことでしょう。時には困難なこともあるかもしれません。しかし、家族の一員としてのモモの存在は、きっと息子の人生に大きな影響を与え続けることでしょう。
そして何より、この かけがえのない日々が、息子の心に温かな思い出として刻まれていくことを願っています。ペットとの暮らしは、子供たちに計り知れない贈り物をもたらしてくれるのです。
今日も、リビングには息子とモモの楽しそうな声が響いています。この何気ない日常の中に、子供の成長を支える大切な要素が詰まっているのだと、私は確信しています。モモという家族を迎えた決断は、間違いなく正しかったのだと。
組織名：株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名：UETSUJI TOSHIYUKI
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