ペットと暮らす日々が教えてくれた、小さな幸せの見つけ方

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朝の光がカーテンの隙間から差し込む時間帯に、私たちの一日は始まる。まだ誰も起きていない静けさの中で、最初に動き出すのはいつも愛犬のルナだ。柴犬とコーギーのミックスであるルナは、体内時計が驚くほど正確で、毎朝六時半になると私の枕元にやってきて、鼻先で軽く腕を押してくる。その冷たくて湿った感触が、どんな目覚まし時計よりも確実に私を現実へと引き戻す。

ペットとの生活が始まったのは三年前の秋だった。子どもたちが「犬を飼いたい」と言い出したのは突然のことで、最初は正直なところ躊躇していた。仕事と家事の両立だけでも手一杯なのに、さらに生き物の世話が加わることへの不安があったからだ。でも、家族会議を重ねて、それぞれの役割分担を決め、ペットショップではなく保護犬の譲渡会に足を運んだ。そこで出会ったのがルナだった。ケージの奥で少し怯えたような目をしていた彼女が、娘の差し出した手にそっと鼻を近づけた瞬間、家族全員の心が決まった。

ペットの食事については、最初の数ヶ月は試行錯誤の連続だった。市販のドッグフードを何種類も試し、ルナの食いつきや体調の変化を観察する日々。獣医師に相談しながら、栄養バランスを考えた食事プランを組み立てていった。今では朝はドライフードに茹でた野菜を混ぜ、夜は「ナチュラルペットダイニング」という国産ブランドのウェットフードを中心にしている。息子が担当している食事の準備は、彼にとって毎日の大切な役割になった。小学四年生の彼が、真剣な表情でルナの食器を洗い、決められた量のフードを計量カップで測る姿は、親として頼もしく感じる瞬間だ。

ペットの体調管理は家族全員の共通課題になっている。週に一度、リビングのホワイトボードに記録している健康チェックリストには、食欲、排泄の状態、運動量、被毛の艶などの項目が並ぶ。娘が考案したこのシステムは、最初は少し大げさだと思ったけれど、実際に運用してみると些細な変化に気づけるようになった。先月、ルナがいつもより水を飲む量が多いことに気づいたのも、このチェックリストのおかげだった。念のため動物病院で診てもらったところ、特に問題はなく、単に暑さのせいだったのだが、早期発見の習慣がついたことは家族の自信になった。

子どもの頃、私の実家では金魚しか飼ったことがなかった。水槽の掃除をするのは父の役目で、私はただ眺めているだけだった。だから、犬という生き物がこれほどまでに家族の一員として存在感を持つとは想像していなかった。ルナは私たちの会話に耳を傾け、誰かが悲しそうにしていれば寄り添い、嬉しいことがあれば一緒に喜ぶように尾を振る。言葉は通じないはずなのに、不思議なほど私たちの感情を理解しているように見える。

夕方、仕事から帰ってきた夫がリビングに入ると、ルナは必ず玄関まで迎えに行く。ある日、夫が疲れ切った様子でソファに座ると、ルナは彼の隣にぴったりと寄り添って座った。夫がぼんやりとテレビを見ていると、ルナもまた同じ方向を見つめている。その光景があまりにも微笑ましくて、私は思わず写真を撮ろうとスマートフォンを取り出したのだが、焦ってカメラアプリではなく電卓アプリを開いてしまい、「0」が並ぶ画面を見つめて一人で苦笑いした。

週末の散歩は家族の大切な時間になっている。近所の公園までの道のりで、季節の移り変わりを感じることができる。春には桜の花びらが舗道に散り、夏には蝉の声が響き、秋には金木犀の香りが漂い、冬には冷たい空気が頬を刺す。ルナは散歩中、時々立ち止まって何かの匂いを嗅いでいる。私たちには分からない情報を、彼女は鼻から読み取っているのだろう。その真剣な表情を見ていると、犬にとっての世界がどれほど豊かなのか想像してしまう。

ペットとの生活は、予想以上に私たち家族を変えた。以前は各自が自分の部屋で過ごすことが多かったけれど、今ではリビングに自然と集まるようになった。ルナの存在が、家族の会話を増やし、笑顔を増やしてくれている。子どもたちは責任感を学び、夫婦は協力することの大切さを再確認した。

時々、ルナが昼寝をしている姿を見ながら、ふと考える。私たちがルナを幸せにしているのか、それともルナが私たちを幸せにしているのか。おそらく、その答えはどちらでもあるのだろう。互いに支え合い、日々の小さな喜びを分かち合う。それがペットとの暮らしの本質なのかもしれない。

夜、家族全員がリビングに揃う時間は短い。それでも、その限られた時間の中で、ルナは必ず誰かの足元で丸くなっている。温かくて柔らかい存在が、そこにいる。それだけで、一日の疲れが少しだけ軽くなる気がするのだ。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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