
朝の光が窓から差し込んでくる頃、我が家の一日はいつも同じ音で始まる。カタカタとドアを引っ掻く音、それから小さな鳴き声。ペットとの生活が始まってから、目覚まし時計よりも確実に、そして温かく朝を迎えられるようになった。
柴犬のハナを家族に迎えたのは、長女が小学校に入学する少し前のことだった。当時は夫婦共働きで、子どもたちも保育園に通っていて、正直なところペットを飼う余裕があるのかどうか不安だった。でも子どもたちの「犬が欲しい」という願いは真剣で、何度も家族会議を開いた末に、試しに保護犬の一時預かりボランティアに参加してみることにした。そこで出会ったのがハナだった。少し臆病で、人の顔をじっと見つめる癖のある子犬。最初はぎこちなかったけれど、次第に家族の一員として溶け込んでいった。
ペットとの生活は想像以上に大変だった。特に食事の管理には気を使った。市販のドッグフードを与えていたものの、ハナの体調に合わせて調整する必要があった。ある時期、ハナが急に食欲を失ってしまったことがあった。獣医さんに相談すると、季節の変わり目で体調を崩しやすいこと、フードの種類を変えてみることを勧められた。それから我が家では「ペットノート」と名付けたノートを作り、毎日の食事内容や体調、散歩の様子を記録するようになった。
子どもたちもそれぞれの役割を持つようになった。長女は朝の散歩担当、次女は水とご飯の準備担当。最初は親が声をかけないとやらなかったけれど、今では自分から進んでやるようになった。特に印象的だったのは、次女がハナの誕生日にケーキを作ろうと提案した時のこと。犬用のケーキレシピを調べて、ヨーグルトとバナナで作った小さなケーキを用意した。ハナは喜んで食べてくれたけれど、勢いよく食べ過ぎて鼻にクリームをべったりつけてしまい、家族全員で笑った。その光景は今でも鮮明に覚えている。
夏の夕暮れ時、家族でハナを連れて近所の公園に行くことが多い。芝生の上を走り回るハナを見ながら、夫とベンチに座ってアイスコーヒーを飲む。子どもたちはハナと追いかけっこをして、汗だくになって笑っている。そういう何気ない時間が、ペットと暮らすようになってから増えた気がする。以前は週末も家でダラダラ過ごすことが多かったけれど、今は「ハナを散歩に連れて行かなきゃ」という理由で外に出る機会が増えた。
ペットの体調管理は思っていた以上に繊細だった。ハナは皮膚が弱く、夏場は特に気をつけなければならない。動物病院の先生に勧められて、シャンプーは低刺激のものに変え、散歩後は必ず足を洗うようにした。また、定期的に健康診断を受けることも習慣になった。最初は病院嫌いだったハナも、今では診察台の上で大人しく待てるようになった。先生が「いい子だねえ」と頭を撫でると、ハナは尻尾を振って喜ぶ。
ある冬の日、私は仕事で疲れて帰宅した。玄関を開けると、いつものようにハナが飛びついてきた。その日は特に寒くて、体が冷え切っていたけれど、ハナの温かさが心にも体にも染み渡った。リビングに入ると、子どもたちがハナと一緒にこたつで丸くなっていた。夫がキッチンで夕食を作っている音が聞こえる。その瞬間、ペットを迎えて本当に良かったと心から思った。
ペットとの生活は、家族に新しいリズムをもたらしてくれた。朝は早起きになり、夜は早く寝るようになった。週末は必ず外に出かけるようになり、家族で過ごす時間が増えた。子どもたちは命の大切さを学び、責任感も育った。夫婦の会話も増えた。「今日ハナがね」という話題が、自然と食卓を囲む時間を豊かにしてくれる。
最近では、ペット用品のブランド「コンフォートペット」のベッドを新調した。ハナは新しいベッドがよほど気に入ったのか、一日中そこで寝ている。ふかふかのクッションに顔を埋めて、幸せそうに眠る姿を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになる。
ペットとの生活は、決して楽なものではない。でも、その大変さを上回る喜びと幸せがある。ハナが家族に加わってから、我が家には笑顔が増えた。それは間違いなく、ペットがもたらしてくれた小さな奇跡だと思っている。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI


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