
朝6時、いつもと違う音で目が覚めた。
リビングに行くと、うちの猫のマロが変な体勢で固まっていて。ゲホゲホって、人間みたいな咳をしてる。こんなの初めて見た。スマホを掴んで動画を撮ろうとしたけど、手が震えて上手く構えられなくて、結局ぼやけた映像しか残せなかった。あとで獣医さんに見せようと思ったのに…だけど。
病院に連れて行くべきかどうか、その判断が一番難しい。人間なら「ちょっと様子見ようかな」で済むことも多いけれど、ペットの場合はそうもいかない。言葉で「お腹が痛い」とか「昨日変なもの食べた」とか教えてくれないから。私はとりあえずスマホで「猫 咳 嘔吐」って検索したんだけど、出てくる情報が多すぎて逆に混乱した。「すぐ病院へ」って書いてあるサイトもあれば、「毛玉なら心配ない」って書いてあるブログもある。どっちなんだよって。
結局、かかりつけの動物病院に電話したのが朝の8時半。受付の人が「今日は予約でいっぱいなんですが、症状を聞く限り診た方がいいですね」って言ってくれて、急患扱いで10時に滑り込ませてもらえた。待合室には大型犬を連れた家族とか、小鳥をキャリーに入れたおじいさんとかがいて、みんな心配そうな顔をしてる。ペット病院の待合室って独特の緊張感があるよね。消毒液の匂いと、どこかで鳴いてる犬の声と。
診察室に入ると、先生がマロのお腹を触診しながら「最近、食欲はどうでした?」って聞いてくる。そう言われて思い返すと、ここ2、3日いつもより食べる量が少なかった気がする。でもそれって「気がする」レベルで、ちゃんと観察してなかった自分が情けなくなった。
血液検査とレントゲンを撮ることになって、マロは別室に連れて行かれた。待ってる間、私は待合室の古い雑誌をぼんやり眺めてたんだけど、そういえば高校生の時に飼ってた金魚のことを思い出した。あの時も病気になって、ネットで調べた民間療法みたいなのを試して、結局ダメだったんだよな。塩水浴とかやったっけ。今思えば、ちゃんと専門家に相談すればよかったのにって思うけど、当時は「金魚くらいで病院は大げさかな」って考えてた。若かったな、自分。
検査結果が出るまで30分くらいかかった。先生の説明によると、腎臓の数値が少し高めで、脱水症状も見られるとのこと。「今日は点滴して、お薬を出しますね。1週間後にまた来てください」。診察代と薬代で合計2万円弱。正直、痛い出費ではあるけれど、マロが元気になるならと思って財布から諭吉を出した。
ペット保険のこと、実は入ろうか迷ってたんだよね。友達が「うちは入っててよかった」って言ってたし。でも毎月の保険料と、実際にかかる医療費を天秤にかけて、結局入らないまま今に至ってる。今回みたいな急な出費があると「やっぱり入っとくべきだったかな」って思うけど、次の月になるとまた「まあいいか」ってなっちゃう。人間のダメなところだよね、これ。
帰宅してから、マロ専用の記録ノートを作ることにした。体重、食事の量、うんちの状態、気になった行動。獣医さんが「日々の記録があると診断の助けになります」って言ってたから。スマホのアプリでもいいんだけど、私は手書きの方が続く気がして、100円ショップで買ったB6サイズのノートを使うことにした。1日目の記録には「朝6時、咳と嘔吐。病院で点滴。帰宅後は落ち着いて寝てる」って書いた。
ペットとの生活って、こういう「もしも」の連続なんだと思う。元気な時は忘れがちだけど、彼らは私たちより早く歳をとるし、体調の変化も見逃しやすい。毎日一緒にいるからこそ、小さな変化に気づきにくいっていうのもある。「いつもと違う」を感じ取るアンテナを常に張っておかないといけない。
それから1週間、マロは処方された薬を飲んで(これがまた大変で、錠剤を喉の奥に押し込む作業が毎回格闘技みたいになるんだけど)、少しずつ食欲も戻ってきた。再診の日、先生から「数値も改善してますね。よかった」って言われた時は、本当にホッとした。
結局のところ、ペットが病気になった時にできることって、早めに気づいて、信頼できる獣医さんに診てもらって、指示通りにケアすることくらいしかない。魔法みたいな解決策はないし、ネットの情報だけで何とかしようとするのは危険だと身をもって知った。あと、やっぱり保険は…考えとこうかな、今度こそ。
マロは今、窓際で日向ぼっこしながら気持ちよさそうに寝てる。その寝顔見てると、あの朝の焦りとか不安とかが嘘みたいに思えてくるけど。次は気をつけよう、って思うだけで終わらせたくないんだよね。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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