ペットがいる毎日は、少しだけ特別な時間でできている

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五月の朝は、思ったより早くやってくる。カーテンの隙間からこぼれる光が、まだ眠たそうなフローリングの上にうっすらと落ちて、その光の帯の中に、うちのトイプードルのムギが丸くなっていた。毎朝この場所で、この子は日向を待っている。そのことに気づいたのは、一緒に暮らし始めてから半年ほど経った頃だったかもしれない。

ペットとの生活は、日常のリズムをじわりと変えていく。起きる時間が変わり、散歩に出る習慣ができ、夕方になると「そろそろご飯の時間だ」と誰かが言わなくても家族全員がキッチンへ向かうようになる。子どもたちも例外ではなく、小学三年生の長男は今や、朝のご飯の準備を率先してやっている。ムギのフードをスプーンで計量して、ちょっと誇らしそうな顔で皿に盛る、あの仕草が愛おしい。

ペットの食事については、最初はずいぶん悩んだ。
「年齢に合わせて食事を変えている」という意識を持つ飼い主が増えており、ペットの食事への関心は年々高まっている
という話を読んで、うちも真剣に向き合うようになった。最初の頃は市販のドライフードだけだったのが、今はトッピングとして少量の手作り食を加えている。
すべてを手作りにするのは栄養管理の面で難しく、ペットフードに少量の手作りをトッピングする方法が現実的
だと知って、肩の力が抜けた気がした。完璧にやろうとしすぎていたのだと思う。

ある土曜日の昼下がり、近所の「ペットショップ・ノーチェ」に家族で立ち寄ったとき、店員さんに「最近フレッシュフードに切り替えるご家庭が増えてますよ」と教えてもらった。
新鮮な肉や野菜を使い出来たてを急速冷凍したフレッシュなドッグフードが愛犬家の間で注目を集めている
らしく、棚には見たことのないパッケージが並んでいた。子どもたちは興味津々で商品を手に取り、次女が「これ、人間も食べられそう」と言ったのがなんとも正直で、思わず笑ってしまった。

ペットの体調管理もまた、家族の会話の中に自然と溶け込んでいる。
ペットの高齢化にともない、肥満や生活習慣病といった健康上の問題が顕在化し、飼い主のニーズも変化している
というのは、他人事ではない。ムギはまだ若いけれど、毎月の体重チェックと、定期的な動物病院でのチェックアップはもう習慣になった。体重を測るたびに家族全員が覗き込んで、「先月より少し増えたかも」「おやつ多かったかな」なんて話し合う。そのやりとりが、なんとなく楽しい。

ペットのメンタルヘルスや心理ケアへの関心も高まっており、ストレスを軽減するためのグッズやサービスが増えている
という流れの中で、うちでも最近、ムギが一人でいる時間に不安を感じていないか気にするようになった。仕事から帰ってドアを開けた瞬間、玄関まで全力で走ってくる音。爪がフローリングを引っかく、あのカカカカという音が聞こえると、なんとも言えない安心感がある。

思い返せば、子どもの頃に実家で飼っていた柴犬のことが、ふとよみがえることがある。あの犬は食事の時間になると必ずしっぽを九十度の角度で立てて待っていた。その仕草がどこかムギに似ていて、二十年以上の時間がひとつにつながるような、不思議な感覚になる。

ペットとの生活は、ただ動物を飼うということではない。毎日の小さな観察が積み重なって、その子のことが少しずつわかっていく。今朝は食欲がある、昨日より水をよく飲んでいる、耳の後ろを気にして掻いている。そういう変化に気づける自分たちになれたのは、一緒に暮らしてきた時間のおかげだと思う。

五月の夕方、窓から入ってくる風はまだ少しひんやりしていて、ムギはソファのすみっこで目を細めながらうとうとしている。長男がそっと隣に座って、膝にムギの頭を乗せてやる。何も言わずに、ただそこにいる。それだけで、今日も一日がちゃんと終わっていく気がした。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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