ペットと行く長距離ドライブ旅、車の中で気づいた「一緒にいる」ということの意味

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助手席の窓に、うっすらと鼻の跡がついていた。ルーチェが旅のあいだじゅう、ガラスに顔を押しつけていた証拠だ。ラブラドール・レトリバーの彼女は、流れていく景色のひとつひとつに、まるで初めて世界を見るような目を向けていた。

今年の夏の終わり、9月に入ったばかりの朝のことだった。空はまだ夜の名残を帯びた濃紺で、東の稜線だけがうっすらとオレンジに染まっていた。出発は午前5時半。車のエンジンをかけた瞬間、ルーチェがぴくりと耳を立てた。彼女にとって、あの音はもう「旅のはじまり」を意味するらしい。

ペットとの生活を続けていると、動物の感覚の鋭さに何度も驚かされる。準備をはじめた前夜から、彼女はすでにそわそわしていた。キャリーバッグをクローゼットから出した瞬間、尻尾が激しく揺れ始めた。あれは間違いなく「わかってる」という顔だった。

車に乗る前には必ずトイレを済ませておくことが大切で、特に長距離移動はワンちゃんにとってかなりの負担になる。
そのことは頭でわかっていた。でも実際に出発前のルーチェを外へ連れ出すと、興奮しすぎてなかなか用を足さない。10分ほど待って、ようやく「よし」となった。……正直、毎回これが一番手こずる工程だ。

高速道路に乗ってしばらくすると、ルーチェはクレートの中で丸くなり、目を閉じはじめた。
ブランケットをクレートにかけて仄暗い環境を作ることで、睡眠が取りやすくなる。
これを知ってから、旅の前夜に必ず彼女のお気に入りのタオルを一枚、クレートに入れるようにしている。自分の匂いがするものがあると、安心するのだという。

窓の外は、ゆっくりと夜明けに変わっていった。山の稜線が朝焼けに溶けていくのを見ながら、ふと子どもの頃のことを思い出した。家族で車に乗るたびに、後部座席でぐっすり眠り、気づけば知らない景色の中にいた。あの感覚を、今はルーチェと共有しているのかもしれない。

1〜2時間おきを目安に休憩を取り、水分を与えたり外に連れ出したりして気分転換を図ることが重要で、犬の変化を見逃さないようにすることが大切だ。
最初のSAで車を降りると、ルーチェは地面に鼻をつけて一心不乱に匂いを嗅ぎ始めた。ここにどんな犬が来たのか、どんな人間が歩いたのか、全部わかるのだろうか。彼女の鼻は、わたしには見えない地図を読んでいる。

SAやPAには大勢の人がいて、動物アレルギーや動物が苦手な人もいるため、必ずリードをつけて行動することでトラブルを未然に防ぐことができる。
これはペットとの生活における長距離移動で、絶対に忘れてはいけないマナーのひとつだと思っている。どれだけ愛犬が人懐こくても、すべての人が犬好きだとは限らない。

車酔いしないワンちゃんであっても、車内の温度や揺れ、音などで体調を崩してしまうことがあるため、車内環境の改善や休憩は必ず挟むべきだ。
この日も、途中でルーチェが少し落ち着きをなくした時間帯があった。エアコンの風向きを変え、後部座席の日差しをサンシェードで遮ると、ほどなくしてまた静かになった。小さな変化を見逃さないこと。それが長距離移動における最大の注意することのひとつだ。

目的地に着いたのは昼過ぎだった。海沿いの小さな町、灯台のそばに「ノルテ岬ロッジ」という宿があって、そこがこの旅のゴールだった。木の香りがする玄関を入ると、ルーチェはすんすんと鼻を動かし、しっぽをゆっくり振った。「ここは悪くない」という評価らしい。

2026年、ペット同伴旅行の予約は前年比260%増と大幅に急増しており、
ペットとともに旅をするスタイルは、もはや特別なことではなくなりつつある。でもわたしにとって、ルーチェとのドライブは数字や流行とは関係なく、ただただ「一緒にいる時間」そのものだ。

夕暮れ時、宿のデッキに出て海を眺めた。潮の匂いが鼻をかすめ、波の音が低く響いていた。ルーチェは隣に座って、同じ方向を見ていた。何を考えているのかはわからない。でも、その温かい体がそこにある。それだけで、長い道のりを走ってきた意味が、ちゃんとあると思えた。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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