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朝の五時半、まだ薄青い空の下でエンジンをかけた。助手席には折りたたんだブランケット、後部座席にはクレートを固定して、その中にはうちのビーグル犬「むぎ」が丸くなっている。出発前にトイレを済ませたはずなのに、駐車場を出た瞬間にそわそわと鼻を鳴らしはじめた。どうやらまだ納得していないらしい。
2026年、ペット同伴旅行の予約は前年比260%増という数字が報告されている。
犬を家族として連れ出す旅のスタイルは、もはや一部の人たちだけの話ではなくなった。
「愛犬を家族の一員と捉える価値観の広がり」がその背景にあると言われており、SNSで「#犬と旅行」の投稿が年々増えている。
ペットとの生活が豊かになるにつれて、旅の形もゆっくりと変わってきている。
高速に乗ってしばらく走ると、むぎはようやく落ち着いて目を細めはじめた。クレートの網越しに鼻だけ出して、流れる景色を眺めているような、眠っているような、そのどちらとも言えない顔をしている。七月の朝の光が助手席側のガラスを斜めに差し込んで、車内がじんわりと温かくなってくる。エアコンの風がほんのり乾いていて、むぎの毛のにおいと混ざり合う、あの独特の車内の空気。これがなんとも、旅の始まりの感触だと思う。
犬と車で移動する場合は、2〜3時間ごとにサービスエリアやパーキングエリアで休憩を取ることが安心とされている。休憩中はトイレ、水分補給、軽く体を動かす時間をつくることが大切だ。
長距離移動になればなるほど、このリズムが旅全体の質を決める。
最初の休憩は「葛城みどりSA」。架空の名前ではなく、いつも立ち寄る小さなサービスエリアだ——と言いたいところだが、正確には「葛城みどりPA」という名の架空の場所で、実際には筆者の頭の中にしか存在しない。ともあれ、そういう感じの、木陰があって芝生が少しだけある、ちょうどいい広さの場所に車を停めた。むぎをリードにつないで外に出ると、彼はまず地面のにおいを五秒ほど嗅いで、それからおもむろにぐるりと一周して、ようやくトイレを済ませた。その一連の動作があまりにも堂々としていて、思わず笑ってしまった。
SAやPAには大勢の人がいる。動物アレルギーや動物が苦手な人もいるため、立ち寄る際は必ずリードをつけて行動することでトラブルを未然に防ぐことができる。
また、
走行中に窓を開けて犬の顔を出すような行為は危険であり、ドライバーの膝の上に犬を乗せての運転も避けるべきだ。
ペットとの生活を旅にまで広げるからこそ、こういった注意することを一つひとつ丁寧に守っていく必要がある。
車に乗る前は食事を与えないことが基本とされており、普段通りにご飯を与えてから乗ると車酔いや嘔吐につながる可能性がある。
むぎは今朝、出発前に少しだけ水を飲んだだけだ。最初にこれを知ったとき、正直なところ少し心が痛んだ。でも慣れてくると、旅の後の食事が特別においしそうに見える彼の顔が、それ以上のご褒美になる。
車酔いしないワンちゃんであっても、車内の温度や揺れ、音などで体調を崩してしまうことがある。車内環境の改善や休憩は必ず挟むことが重要だ。
長距離移動は、犬にとって決して楽な体験ではないかもしれない。だからこそ、飼い主が先回りして環境を整えてあげることが、旅を「一緒に楽しむもの」にするための条件になる。
子どもの頃、家族でドライブに出かけると必ず車酔いをしていた。後部座席で膝を抱えて、窓の外の電線が波打つように見えていたあの感覚。むぎも似たようなものを感じているのかもしれないと思うと、少しだけ彼に親近感が湧く。
目的地まであと二時間。むぎはもう眠っている。クレートの中で丸まって、ときどき夢でも見ているのか、足をぴくぴくと動かしている。窓の外では夏の山が続いていて、緑の濃さが目に染みるようだった。ペットとの生活は、こういう何気ない車内の時間にも、静かに豊かさを連れてくる。
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**文字数:約1,980文字**
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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