ペットと行く車旅、長距離移動で知っておきたい注意することのすべて

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夏の朝、まだ空が薄い橙色をしている時間帯に、私たちは出発した。助手席には麦茶の入ったステンレスボトル、後部座席には3歳のトイプードル・ムギのクレート。エンジンをかけた瞬間、ムギが小さくひと声鳴いた。いつもの散歩とは違うと、彼女なりに感じているのかもしれない。

ペットとの生活を愛犬との旅行というかたちで楽しむ人は年々増えており、2026年には国内ペット関連市場が2兆円規模に達するとも予測されている。
「#犬と旅行」というタグがSNSに溢れ、
「愛犬を旅行に連れて行きたい」という愛犬家は96.3%にのぼるという調査結果もある。
ペットとの生活がここまで豊かになった今、車での長距離移動という選択肢はごく自然なものになりつつある。

ただ、楽しい旅の裏には、きちんと知っておくべき注意することがいくつかある。

まず、出発前の準備から話を始めよう。
食事は車に乗る2〜3時間前には済ませておくこと。食後すぐの乗車は犬も車酔いしやすく、軽い運動やお散歩をはさむのが理想的だ。
私はその日、朝5時半にムギのご飯を出した。彼女はいつもより早い食事に少し戸惑いながらも、ぺろりと平らげた。そして出発前にトイレを済ませ、クレートに入ってもらう。いつも使っているブランケット——架空のペットブランド「ノルドパウ」のやわらかなウール素材——をクレートに敷いてやると、ムギはくるりと一回転して落ち着いた。

中小型犬なら、乗車中は丈夫なクレートに入れ、後部座席の足元に固定するのが基本。カーテンなどで窓を目隠しすると車酔いの予防にもなる。
これを守るだけで、長距離移動中の安心感はぐっと変わる。

高速道路に乗ってしばらく、ムギはうとうとしはじめた。クレート越しに見える小さな鼻先が、規則正しく上下している。車内には朝の光が斜めに差し込んで、ムギの毛並みをやわらかく照らしていた。その光の温かさと、エアコンの冷たい空気が混ざり合う車内の感触は、旅の始まりにしか存在しない独特のものだった。

長距離移動中の休憩は、1〜2時間につき20〜30分程度が理想。休憩のたびに愛犬の体調を確認し、運動させることが大切だ。
私たちが立ち寄ったサービスエリアには、小さなドッグランがあった。ムギはクレートから出た瞬間、まるでバネが弾けるように走り出した。その勢いに思わず笑ってしまう。——ちなみに私、リードを持ったまま引っ張られて半歩よろけた。朝からなかなかの運動である。

犬の適温の目安は21〜25℃。クレートやキャリーの中は熱がこもりやすいため、愛犬の様子をこまめに確認し、車内の温度や空気の流れを調節することが重要だ。
夏場の長距離移動では、特にこの温度管理が注意することのひとつになる。直射日光があたる窓にはサンシェードを貼っておくとより安心だ。

ドッグランやペット施設を利用する際には、1年以内の狂犬病予防接種証明書と混合ワクチン接種証明書が必要不可欠。ワクチンの証明書や療法食のフード、薬などは忘れると現地では手に入れられないため、必ず持参すること。
これは私自身、一度ヒヤリとした経験がある。子どもの頃、祖父の家に行くとき家族の犬の薬を忘れ、近くの動物病院を探し回ったことがあった。あの焦りは今も鮮明に覚えている。だからこそ、出発前のチェックリストは欠かさない。

移動中に愛犬はクレートに入れることが推奨されているが、まだこの方法で乗せている飼い主は少ないのが現状。誤操作や注意不足を招く危険な乗せ方は絶対に避けるべきだ。
ペットとの生活を長く豊かに続けるためにも、安全な移動のルールを守ることが、旅そのものを守ることにつながる。

目的地に近づくにつれ、ムギはまた目を覚ました。窓の外に流れる山の緑の匂いが、少し開けた換気口から入ってくる。草と土の混じった、夏の山の香り。ムギの鼻がひくひくと動いた。

ペット同伴旅行は「短時間で詰め込む」よりも「のんびり滞在型」が好まれる傾向があり、施設が整っていれば「また来たい」「今度は別の季節に」とリピートにもつながりやすい。
この旅が終わったとき、きっとそう思うだろうと、私はすでに確信していた。

ペットとの生活は、日常の延長線上にある。そして長距離移動を経て辿り着いた先で見る景色は、ふたりで分かち合うからこそ、格別に美しい。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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