
以下、要約いたします:
四月の朝は、光の差し方がどこかやわらかい。カーテンの隙間から斜めに入り込む日差しが、フローリングの上にまだら模様を描いていた。その光の中に、うちのトイプードル「むぎ」がのんびりと寝そべっていて、隣には五歳になったばかりの娘がちょこんと座っていた。
娘は、むぎの耳をそっと触っていた。ふわふわした感触に目を細めながら、「あったかい」とつぶやく。トーストが焼けるにおいが漂い、コーヒーメーカーがかすかな音を立てている朝の空気の中で、ふたりの間に流れていたのは、言葉のない静けさだった。
犬の温もりや優しい仕草は、子供の五感を刺激し、感受性を育むのに最適だという。その言葉を読んだのは確かどこかの育児サイトだったけれど、あの朝の光景を見ていたら、理屈よりも先に腑に落ちた。
ペットとの生活を始めたのは、娘が三歳になった頃のことだ。当時の私は、世話の手間、衛生面、アレルギーのリスクなど、頭の中でいくつもの心配が渦を巻いていた。「子どもに動物アレルギーや喘息の症状が出ないか」という不安は、子育て世帯がペットを迎える際に最も多く挙げる懸念のひとつだという。それでも、夫と話し合い、かかりつけの獣医を探し、インテリアブランド「ノルドハウス」のペット対応ラグを敷いて、むぎを迎えた。
最初のうちは、娘がむぎに近づきすぎて困ることも多かった。尻尾をつかもうとしたり、顔を押しつけすぎたり。子どもが幼い頃はペットにとってかわいそうなことになっていたという話も珍しくない。うちも例外ではなく、むぎがそっと部屋の隅に逃げていく場面を何度も見た。
でも、ある日を境に、何かが変わった。娘が泣いているとき、むぎがそっと近寄って、娘の手をぺろりと舐めたのだ。娘はびっくりしたような顔をして、それからふっと泣き止んだ。「怒られて娘が泣いていた時、愛犬が娘の近くに寄り添って慰めていた姿が微笑ましかった」という声は、ペットと子供を一緒に育てた親たちの間でよく聞かれる。
ペットが子どもに与えた影響として最も多く挙げられるのは「感受性が豊かになった」であり、約半数の親がそう答えている。娘の変化は、数字より先に私の目に映った。むぎのごはんの時間を気にするようになり、散歩のリードを「私が持つ」と言い張るようになった。正直、まだ力が足りなくてリードがぐにゃぐにゃになってしまうのだけど、その一生懸命さがたまらなく愛おしかった。
ペットという別の生き物に興味を持ち、一緒に遊んだり世話をしたりすることは、愛情や思いやりを学んだり、責任感や協調性を育んでくれる。むぎの体温を感じながら、娘は言語化できないような、でも確かに大切な何かを学んでいる。
私自身、子どもの頃に実家で柴犬「あずき」を飼っていた。毎朝、学校に行く前に必ずあずきの頭を撫でてから玄関を出ていた。あの感触は、三十年以上経った今でも指先に残っている気がする。ペットとの生活が子供に与えるものは、その時々の喜びだけじゃない。記憶の奥に刻まれる、温かい感触のようなものだと思う。
ペットと触れ合う機会の多い子供は、ストレス耐性が強い傾向があることも調査で分かっている。そしてそれは、デジタルの画面からは得られないものだ。むぎの毛並みの柔らかさ、ぬくもり、鼻先のひんやりした感触。娘がそれらを全身で受け取っているとき、画面を見ている時とは明らかに表情が違う。
春の朝、むぎはまたうとうとしはじめた。娘はその横に静かに寄り添い、自分もうとうとしている。窓の外では桜の花びらが数枚、風に乗って舞い上がった。
ペットとの生活は、子供に何かを教えてくれる。それは教科書には載っていない、やわらかくて確かなものだと、この春の朝、私はまた思った。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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