ペットと行く、長距離ドライブの旅──車窓に映る景色と、助手席のぬくもり

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4月の朝、まだ空気が少しひんやりしているうちに車のエンジンをかけた。後部座席では、ミニチュアシュナウザーの「ムギ」が丸くなっている。目的地は長野県の北部、架空のリゾートエリア「ヴォルタ高原」。片道およそ4時間。ペットとの生活を始めてから3年が経ち、今年の春旅行はいよいよ本格的な長距離移動に挑戦することにした。

愛犬を連れて旅行に行きたいと考える飼い主は94.5%にのぼるという調査結果がある。
それほど多くの人が「一緒に行きたい」と思いながら、なかなか踏み出せずにいる。理由のひとつは、長距離移動への不安だろう。私もそうだった。でも、準備さえ整えれば、ムギとの旅は想像以上に豊かなものになる。

出発前日の夜、いつもより念入りに荷物を確認した。
リード・首輪・ハーネス、給水用皿、水、フード、おやつ、薬、犬用エチケット袋、ペット用ウェットティッシュ、そして狂犬病予防接種と混合ワクチン接種済証明書
──ドッグランや施設を利用するときに欠かせない書類だ。一度だけ忘れたことがあって、施設の入口で引き返した苦い記憶がある。あのときのムギの「え、帰るの?」という顔は、今でも少し笑える。

食後すぐや空腹時の乗車は車酔いしやすい。食事は車に乗る2〜3時間前に済ませ、乗せる前には必ずトイレも済ませておくとよい。
この日も朝6時に食事を終わらせ、近所を少し散歩させてから出発した。ムギはクレートに落ち着いて入り、エンジン音を聞いてもう一度目を閉じた。

高速道路に乗ってからしばらくは、春の朝日が車内に斜めに差し込んでいた。ムギの背中が金色に光っている。窓の外には、まだ葉が開ききっていない山の稜線が続いていた。淡い緑と、残雪の白。こういう景色は、ひとりで走っていたら見過ごしていたかもしれない。

長距離移動には高速道路の利用をおすすめする。最近ではドッグランがついているサービスエリアも増えており、1時間半に1回ほど立ち寄って走らせてあげると、その後は車内でよく眠ってくれる。
実際、最初の休憩でドッグランに入れた途端、ムギは全力で走り回った。5分もすれば満足したのか、戻ってきてリードを引っ張り「もう行こう」という顔をする。

犬の適温の目安は21〜25℃。クレートやキャリーの中は熱がこもりやすいので、こまめに様子を確認し、車内の温度や空気の流れを調節することが大切だ。
春とはいえ、直射日光が当たる車内は思った以上に温度が上がる。サンシェードを窓に貼り、エアコンをやや低めに設定する。
人間にとってはよい香りの芳香剤でも、嗅覚の鋭い犬には負担になることがある。ニオイで車酔いすることもあるため、芳香剤は使わないようにしよう。
この日も車内はあえて無香のまま。窓を少し開けると、山の空気が入ってきた。湿った土と、どこかから漂う木の芽の香り。ムギが鼻をひくつかせた。

注意することはもうひとつある。
走行中に窓からペットの顔を出させることや、クレートに入れずフリーの状態で走ることは危険であり、道路交通法違反にもあたる。
ペットとの生活が豊かになるほど、ついつい「少しくらいなら」と甘くなりがちだ。でもそれは、ムギ自身を危険にさらすことでもある。

ペット同伴旅行は「短時間で詰め込む」よりも「のんびり滞在型」が好まれる傾向がある。
今回の旅もそのつもりで組んだ。2泊3日、急がない。
ペット同伴可能なプランの予約泊数は前年比1.2倍以上に増加しており、専用設備や食事メニューの充実など付加価値の高いサービスへの需要が高まっている。
それだけ多くの人が、ペットと一緒に「ちゃんとした旅」をしようとしているのだと思う。

ヴォルタ高原に着いたのは昼過ぎだった。チェックイン前に宿の外でムギを降ろすと、初めての土の感触を確かめるように、ゆっくりと歩いた。鼻を地面につけたまま、しばらく動かない。知らない場所の匂いを、全部吸い込もうとしているみたいだった。その背中を見ながら、ああ連れてきてよかったと思った。

長距離移動は、確かに準備がいる。でも、その先にある景色と、ムギと一緒に感じる空気は、何にも替えられない。ペットとの生活は、こういう「一緒に遠くへ行く」という体験によって、もう少し深くなる気がしている。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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