ペットが病気になった夜、わたしたちにできること

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夏の終わりかけた夕方、窓から差し込む西日がオレンジ色に部屋を染めていた。愛猫のムギが、いつもなら飛びついてくるはずのごはんの器の前で、ただじっと座っていた。食べない。鳴かない。ふだんはごはんの袋を開ける音だけで台所に駆け込んでくるくせに、その日だけは動かなかった。

なんとなくおかしいと感じたのは、その少し前からだった。朝、わたしがソファに座ってコーヒーを飲んでいると、ムギがいつものように膝に乗ってきた。でも体が少し熱い気がした。触れた瞬間のあの感触、ふわふわした毛の奥にある体温が、いつもより確かに高かった。ペットとの生活を始めて三年、こういう小さなサインを見逃したくないといつも思っていたのに、そのときはまだ「気のせいかも」と自分に言い聞かせていた。

結局、夜になっても食欲が戻らず、ぐったりした様子のムギを連れてペット病院へ向かった。夜間対応をしてくれる動物病院を探して、スマートフォンの画面を指で何度もスクロールした。近所の「みなみ台どうぶつクリニック」が夜間診療に対応していることを知ったのは、実はその夜が初めてだった。もっと早く調べておけばよかったと、駐車場に車を停めながら少し後悔した。

診察室に入ると、獣医師の先生が丁寧にムギの体を触診してくれた。聴診器を当てる音、静かな室内に響く先生の落ち着いた声。ムギは観念したのか、珍しくおとなしくしていた。ふだんはキャリーバッグに入れるだけで大騒ぎするくせに、このときばかりは神妙な顔をしていた——正直、少しだけ笑えた。

検査の結果、軽度の胃腸炎だった。大事には至らなかったが、先生からはこう言われた。「こういうサインを早めに連れてきてくれると助かります」と。その言葉がずっと耳に残っている。

ペット病院に行くタイミングは難しい。「大げさかな」「様子を見ようかな」と迷ううちに、症状が進んでしまうことがある。特に猫は痛みや不調を隠す習性があるため、食欲の低下、元気のなさ、呼吸の変化といった小さな変化が重要なサインになる。嘔吐や下痢が続く場合、水を飲まない日が続く場合、ぐったりして動かない場合は、迷わず受診することが大切だ。

そして、ペットとの生活を続けるうえで、わたしがムギの件をきっかけに真剣に向き合ったのがペット保険だった。

犬や猫の治療費は公的医療保険の対象外で、全額が飼い主の自己負担となる。骨折の手術で10〜30万円、がんの抗がん剤治療で月5〜10万円かかることも珍しくない。
今回のムギの通院費用は数千円で済んだが、もし手術が必要な状態だったら、と考えると背筋が冷えた。

「かかりつけ獣医師ダイヤル」というサービスもあり、病気やケガ、しつけや行動を24時間365日に無料で相談できる
ペット保険もある。夜中に急変したとき、まず電話で相談できる窓口があるというのは、飼い主にとってどれほど心強いか。

ペット保険には明確な正解がなく、優先順位の付け方で選択が変わる。補償重視・保険料重視・ライフスタイル重視など、考え方を整理したうえで候補を絞ると判断しやすくなる。
ムギのような猫には、通院補償がしっかりついたプランが向いているかもしれない。

あの夕方の西日と、器の前でじっと座っていたムギの後ろ姿は、今でも鮮明に思い出せる。ペットは言葉を持たない。だからこそ、わたしたちが日々の小さな変化に気づける目を持つこと、そして万が一のときに動ける準備をしておくことが、ペットとの生活を守ることになる。ムギは今日も膝の上で丸くなって、ごろごろと喉を鳴らしている。それだけで、十分だと思う。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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