ペットが病気になった夜、わたしたちにできること

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秋の夕暮れは、思いのほか早く訪れる。午後五時を少し過ぎたころ、窓の外がもう橙色に染まっていて、部屋の中にはどこか甘くほこりっぽい空気が漂っていた。そんな静かな夕刻に、いつもなら足元にじゃれついてくるはずの愛犬・ムギが、ソファの隅でうずくまったまま動かないことに気がついた。

ムギは七歳になるミニチュアシュナウザーで、食欲旺盛で元気が取り柄の犬だった。それがその日は、差し出したフードにも鼻をひくつかせるだけで顔をそむける。体を触れると、いつもより少し熱い気がする。気のせいかと思って手のひらをあてたまましばらく待ったが、やはり温度が高い。

ペットとの生活を始めて七年。こんなに心がざわついたのは初めてかもしれない。

すぐにかかりつけのペット病院に電話した。「まずは様子を見て、嘔吐や震えが出るようなら夜間診療へ」という指示をもらい、わたしはムギの隣に座って、ひたすら呼吸を数えた。彼の小さな胸が上下するたびに、こちらの胸も少しだけ締め付けられる。部屋には薄いシナモンの香りがする――アロマディフューザーをつけたままにしていたのだ。こんな夜に、のんきな香りだと思いながら、それでも消す気にはなれなかった。

翌朝、ペット病院の診察室で「軽度の胃腸炎です」と告げられたとき、思わず「よかった」と声が出た。隣で聴診器を当てられたムギは、先生の手をぺろりと舐めた。緊張していたのはわたしだけだったらしい。(ムギよ、少しくらい神妙にしてくれ、と心の中でそっとツッコんだ。)

今回は軽症で済んだが、検査費用と薬代を合わせると、一回の通院で一万円近くかかった。
犬の医療費用は人間より高額になることもあり、日ごろからペット用貯金をしたり、ペット保険に加入して備えることが重要
だと、獣医師にも改めて言われた。

ペットには人間の健康保険のような制度がないため、病院に連れて行くと診療費は自由診療で、全額自己負担となる。ペット保険に加入しておけば、毎月の支払いで万が一のケガや病気のときに補償が受けられ、飼い主の負担を軽減してくれる。
そのことは頭でわかっていたのに、ムギが若くて元気なうちはどこか後回しにしていた。

ペット保険では、動物病院でかかった病気やケガの治療費や、治療に必要な検査費用などが補償される。動物病院でかかった費用の50%や70%など、契約時に定めた補償割合が保険金として支払われるしくみ
になっている。これを知ってから、わたしはすぐに比較サイトを開いた。保険料の差、補償の範囲、窓口精算が使えるかどうか。調べれば調べるほど、もっと早く動いておけばよかったという気持ちが募る。

子どものころ、実家で飼っていた猫が体調を崩したとき、母がぼろぼろ泣きながら動物病院に連れて行ったことを思い出す。あのときわたしはまだ小学生で、「大人でも泣くんだ」と少し驚いた。今ならわかる。ペットとの生活は、いつだって感情の深いところまで届いてくる。

愛犬や愛猫と暮らしていると、健康で楽しく過ごしてほしいというのが飼い主みんなの共通の願いだ。特に猫は腎臓病や膀胱炎といった泌尿器系のトラブルを抱えやすく、日々の健康管理は欠かせない。
犬も例外ではない。シニア期に差し掛かる前に、日常の変化に敏感でいること、そして信頼できるペット病院を持っておくことが、何より大切な備えになる。

ムギはいま、わたしの足元でいびきをかいて眠っている。窓の外では、十月の夕風が金木犀の香りをかすかに運んでくる。あの夜の緊張が嘘のように、部屋はまた穏やかな空気に戻っていた。

ペット保険の資料請求を終えて、パソコンを閉じる。ムギの耳の後ろをそっと撫でると、眠ったまま尻尾だけがゆっくり揺れた。この小さな命と、できるだけ長く、できるだけ安心して、一緒にいたいと思う。それだけのことが、こんなにも大切なのだと、今夜またひとつ、確かめた気がする。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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