ペットと子供が育む、やさしい時間――ふれあいが教えてくれること

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四月の午後、窓から差し込む光がやわらかく床を染めるころ、うちの犬のムギは決まってソファの端でうとうとしている。目を細めて、ときどき耳だけぴくりと動かす。その耳の動きに気づいた娘の汐音(しおね)、五歳、が小声で「ムギ、おきてる?」と囁いた。ムギは答えない。ただ尻尾が、ゆっくりと一度だけ揺れた。

それだけのことなのに、なぜかじんとした。

## ペットがもたらす家族の変化

子どもにとってペットは「兄弟・姉妹」という感覚が強く、親にとっては「もう一人の子ども」のように感じられる存在だと、調査結果でも示されている。我が家もまさにそうで、ムギが来てからというもの、家の空気が変わった。家族の会話が増え、リビングに集まる時間が長くなった。汐音が「ムギのごはん、わたしがあげる」と言い張るようになったのは、ムギが来てから三ヶ月も経たないうちのことだった。

## 感受性を育むペットとのふれあい

ペットとの生活は、子供にとってただの「かわいい体験」では終わらない。ペットが子どもに与えた影響として、「感受性が豊かになった」が約半数で一位となり、「命の大切さを理解できるようになった」「動物が好きになった」が続いたという。

汐音は最近、ムギの水飲み場が空になっていると、自分のジュースを飲む前に水を足しに行くようになった。誰かに言われたわけではない。ただ気づいて、動く。その小さな変化を見るたびに、ペットがいる日常の豊かさを思う。

## 失敗から学ぶ思いやりの心

もちろん、はじめからうまくいったわけではない。ムギが来たばかりのころ、汐音はあまりにも嬉しくて、ムギの耳を両手でぎゅっと引っ張ったことがある。ムギはびっくりして小さく鳴いた。汐音は泣いた。ムギを傷つけてしまったと思って、大泣きしながら「ごめんね、ごめんね」と繰り返した。その夜、枕元に置いたぬいぐるみの犬に向かっても「ごめんね」と言っていた。

幼少期にペットがいると、子どもたちの思いやりの心を育て、認知機能を発達させることが研究により証明されている。思いやりとは、教えて身につくものより、体験の中でじわりと染み込んでいくものなのかもしれない。

## 日常の中で育まれる優しさ

春の夕方、ムギと一緒に近所の小川沿いを歩く。草の青い匂いと、水のひんやりした空気が混ざって、鼻の奥をくすぐる。汐音はムギのリードを握りしめながら、一歩一歩真剣な顔で歩く。

ペットと一緒に育った子供は、他人を気遣ったり、相手の立場になって考えられる優しい子が多いと言われている。ペットを自分の妹・弟のように考える子が多く、自然に面倒を見てあげようとするためだという。

ペットとの生活は、子供にとって「情操教育」という言葉では少し窮屈なくらい、もっと生々しく、やわらかいものだ。毛並みの温かさ、鼻先の湿った感触、寝息の音、夜中にふと目が覚めたとき足元で丸くなっている気配。そういう五感のすべてで感じる日常が、子供の内側に静かに積もっていく。

ペットという別の生き物に興味を持ち、一緒に遊んだり世話をしたりすることは、愛情や思いやりを学んだり、責任感や協調性を育んでくれる。それは確かなことだと思う。ただ、それ以上に、ペットとのふれあいが子供に与えるものは、言葉で測れない何かでもある。

今日も汐音は夕食前にムギのそばに座って、背中をそっと撫でている。ムギは目を細めて、また尻尾を一度だけ揺らした。その光景を台所から眺めながら、これがペットとの生活だな、と思う。特別なことは何もない。でも、この何でもない時間が、汐音の中に確かに何かを育てている。そんな気がしてならない。

**文字数:約1,200文字**

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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