ペットと行く車旅、長距離移動で知っておきたい注意することと、助手席の景色

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五月の朝は、思ったよりも早く明ける。

カーテンの隙間からうっすらと白んだ光が差し込んできた頃、コタロウはもうソファの上で起きていた。柴犬にしては珍しく、じっとこちらを見ている。まるで「今日は違う日だ」と知っているかのように。旅支度の気配を、犬はちゃんと感じ取る。

愛犬を家族の一員と捉える価値観が広がり、「旅行や外出にもわんちゃんを連れて行きたい」というニーズはここ数年で急速に強まっている。
ペットとの生活が「共に生きること」へと変化した今、車での旅は、その最もシンプルな表現のひとつかもしれない。

出発は朝の六時半。東名を使って静岡まで向かう予定だった。コタロウをクレートに入れ、後部座席の足元にしっかり固定する。
中小型犬なら乗車中は丈夫なクレートに入れ、後部座席の足元に固定するのが基本だ。
慣れない頃は嫌がっていたが、今はもう自分からするりと入っていく。その小さな背中を見るたびに、なんとなく胸が温かくなる。

エンジンをかけると、かすかにガソリンと朝露の混じった匂いが漂った。窓の外はまだ薄青く、遠くの山の稜線だけがくっきりと浮かんでいる。ハンドルを握る手に、五月の朝の冷気がまだ残っている。こういう出発の瞬間が、どうしても好きだ。

ペット連れのドライブは、人間の大人だけで移動する時の「1.5倍の時間がかかる」と想定してスケジュールを組むのがよい。渋滞などのトラブルも考慮し、予定を詰め込みすぎないことが大切だ。
長距離移動となると、なおさらそのゆとりが重要になってくる。

高速に乗って一時間ほど走ったところで、最初の休憩をとった。ドッグラン付きのサービスエリアで、コタロウをクレートから出すと、鼻をひくひくさせながらあたりの匂いを確かめ始めた。草の匂い、排気ガス、どこかで焼いているソーセージの香り。犬にとって、世界は匂いでできている。
休憩では水分を与えたり外へ連れ出したりして気分転換を図り、犬の変化を見逃さないようにしよう。

ここで少し白状しなければならない。出発前の準備で、ひとつ大事なものを忘れかけた。ワクチン接種証明書だ。玄関を出てから気づいて、あわてて引き返した。
ドッグランやワンちゃん用の施設を利用するときには、1年以内の狂犬病予防接種証明書と混合ワクチン接種証明書が必要不可欠だ。
コタロウはそんなこちらの慌てぶりを、玄関先でぽかんとした顔で見ていた。あの表情だけで、もう旅の思い出になっている気がした。

ペットとの生活を長く続けていると、こういう「小さな段取りの積み重ね」が旅の質を決めると実感する。
車酔いを防ぐには、強すぎる芳香剤やドライブ直前の食事を避け、できるだけ穏やかな運転を心がけることが大切だ。
今回は出発の二時間半前に食事を済ませ、乗車前にトイレも済ませた。おかげでコタロウは道中ずっと落ち着いていた。

長距離移動で注意することは、体調管理だけではない。
犬の平熱は38℃と人よりも高く、暑さにとても弱い。特に夏場の場合は室温が上がりやすいので、人間が少し肌寒いくらいに下げてあげるとよい。
五月とはいえ、日差しの強い日は油断できない。車内の温度計を見ながら、エアコンの設定を細かく調整した。

静岡のインターを降りた頃、空は完全に晴れ渡っていた。目的地近くの道の駅「ワンダーフィールド御前崎」(架空)に立ち寄ると、芝生の広場でほかの犬たちが走り回っていた。コタロウは最初こそ警戒した様子で立ち止まっていたが、やがてゆっくりと草の上を歩き始めた。その横顔が、なんとなく誇らしげに見えた。

ペット同伴旅行は「短時間で詰め込む」よりも「のんびり滞在型」が好まれる傾向があり、施設が整っていれば「また来たい」「今度は別の季節に」とリピートにもつながっていく。

帰り道、コタロウはクレートの中で丸くなって眠っていた。小さな寝息が、バックミラー越しに確認できる。その寝顔を見ながら、ハンドルを静かに握り直した。今日一日、この子と同じ景色を見ていた。それだけで、十分な旅だったと思う。

ペットと車で旅をするということは、目的地に着くことよりも、道中をどう過ごすかを問われる行為だ。注意することを丁寧に守りながら、それでも旅の余白を楽しむ。その両立が、ペットとの生活をより豊かにしてくれる。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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