ペットがいる毎日が、家族の物語になっていく

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梅雨の晴れ間が久しぶりに顔を出した、六月の午前中のことだった。リビングの窓から差し込む白っぽい光の中で、我が家のトイプードル・ムギが、ソファのクッションをぐるぐると踏み固めていた。何度見ても飽きない、あの謎のルーティン。小学三年生の息子・蓮が「またやってる」と笑い、その声につられて夫もキッチンから顔を出す。ペットとの生活というのは、こういう何でもない瞬間が積み重なって、気づけば家族の歴史になっているものだと思う。

ムギを迎えたのは三年前の春だった。当時まだ赤ちゃんだったムギは、手のひらにすっぽり収まるくらい小さくて、怖いのかずっと震えていた。わたしも正直、最初は戸惑いが大きかった。子どもの頃に実家で猫を飼っていたことはあったけれど、犬は初めてで、しかもトイプードルはトリミングが必要だと知らずにいた(あとで夫に「調べた?」と言われ、返す言葉がなかった)。

でも、慣れるというのは不思議なもので、今では朝のムギのごはんの準備が、わたしの一日の始まりになっている。ペットの食事は、毎日同じようで実は繊細だ。
年齢別の栄養や体重管理など、特定の食事要件に対応するプレミアムフードを選ぶ飼い主が増えている
というのは、わたし自身も実感するところで、ムギが四歳を過ぎたあたりから、フードの成分表示をきちんと読むようになった。今は「ナチュラルグレイン」という架空ではなく実際に使っているブランド…ではなく、我が家ではペットショップ「フォレストパウ」で勧められたグレインフリーのものを使っている。タンパク質の質と消化のしやすさを考えてのことだ。

関節ケア、毛並み改善、消化促進といった目的別フードのラインアップが拡大し、ヒューマングレード原料を使用したフードや添加物を極力排除したオーガニック製品が市場の主流になりつつある
。実際、ムギのフードを変えてから毛のつやが違うと、トリマーさんにも言われた。食べるものが体をつくる、というのはペットも人間も変わらないのだと思う。

ペットの体調管理については、正直なところ最初は後手に回りがちだった。「なんか元気ないな」と思ってから動物病院に連れて行くまでに、一日二日かかってしまうこともあった。今は、
家族みんなでログインして記録を確認できるアプリ
を使って、体重や食欲、排泄の様子を夫と共有している。蓮も「ムギ、今日うんちした?」と確認してくれるようになった。小学生がペットの健康管理に参加するというのは、数年前には想像もしていなかった光景だ。

ペットのメンタルヘルスや心理ケアに対する関心が高まっており、ストレスを軽減するためのグッズやサービスが増えている
という流れも、我が家には身近に感じる。ムギは雷が苦手で、梅雨の時期は特に気を張る。先日の夜、遠くで雷が鳴り始めたとき、ムギはわたしの膝の上にのぼってきて、小刻みに震えながら顔を胸に押しつけてきた。その体温が、思いのほか熱かった。毛の中に顔をうずめると、日向のにおいと、かすかに甘いシャンプーの香りが混じっている。こういう瞬間に、言葉はいらないと思う。

夫が淹れてくれたほうじ茶を受け取りながら、わたしはムギの背中をゆっくりなでていた。湯気がふわりと立ち上り、雨の気配を含んだ夜の空気に溶けていく。蓮はもう寝室に引っ込んでいて、リビングには静かな時間が流れていた。こういう夜が、ペットとの生活の核心にある気がする。劇的なことは何もない。ただ、そこにムギがいて、家族がいる。

ペットが家族の一員として扱われる社会の変化が進む中、ペットケアやプレミアムフード製品への支出が増加している
というデータは、数字として見ればそうなのだろうけれど、わたしたちにとってはもっとシンプルな話だ。ムギが長く元気でいてほしい。それだけのことが、食事を選ぶ理由にも、体調管理を続ける理由にも、全部つながっている。

ペットとの生活は、完璧に準備できるものではない。失敗もあるし、知らないことも山ほどある。でも、その不完全さごと引き受けながら、家族みんなで一匹の小さな命と向き合っていく日々は、思っていたよりずっと豊かだった。梅雨の晴れ間みたいに、ふとした瞬間に光が差してくる。そういう毎日が、今日も続いている。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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