ペットが病気になった朝、私たちにできること——ペットとの生活で知っておきたい備えの話

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六月の朝は、思ったより静かに異変を告げる。

いつもなら台所に立つ気配を察して足元にすり寄ってくるはずのソラが、その日はリビングの隅でじっとしていた。呼んでも来ない。名前を呼ぶと耳だけがわずかに動いたけれど、体は動かなかった。窓から差し込む白い朝の光の中で、ソラの鼻がかすかに乾いているのに気づいたのは、コーヒーを一口飲んだあとのことだった。

ペットとの生活を始めて五年になる。トイプードルのソラは、わが家に来た日から変わらず気まぐれで、甘えたで、食いしん坊だった。だから食欲がないと気づいたとき、胸の奥にじわりと不安が広がった。前日の夕方まで元気だったのに、と記憶を手繰り寄せながら、体温を測ろうとソラに近づく。体は温かかった。でも、どこか違う温かさだと感じた。熱っぽい、というか、ぐったりした重さがある。

こういうとき、まず何をすべきか。

答えは一つで、ペット病院に連絡することだ。「様子を見よう」という判断が後悔につながることは少なくない。特に食欲不振・嘔吐・ぐったりという三つが重なった場合は、素人判断を挟む余地はほぼないと思っていい。かかりつけの動物病院に電話して症状を伝え、受診の優先度を確認する。それが最初の一手になる。

ソラを抱えて車に乗り込んだとき、助手席のシートに置いたキャリーバッグの中で、ソラは小さく丸まっていた。いつもは窓の外を気にして落ち着かないのに、その日は一度も顔を上げなかった。信号待ちのたびに後ろを振り返りながら、私はひたすらに「大丈夫」と言い続けた。誰に言っているのかは、自分でもよくわからなかった。

診断は急性胃腸炎だった。点滴と投薬で数日で回復するとのことで、少し肩の力が抜けた。先生が「早めに来てよかったですよ」と言いながらカルテにペンを走らせる音が、妙に耳に残っている。

帰宅後、ソラが薬入りのごはんを警戒して鼻でそっとよけたとき、思わず笑ってしまった。あんなにぐったりしていたくせに、薬だけはしっかり察知するのだ。その小さな意地っ張りが、なんだかとても愛おしかった。

今回の経験で改めて考えたのが、ペット保険のことだった。今回の治療費は通院と点滴で数万円に上った。
ペットが一度病気になってしまうと、ペット保険に加入できない、または加入できても条件付きとなってしまう可能性があるため、ペットが健康なうちに加入を検討しておくことが重要だ。
ソラが元気だった頃、「まだ若いから大丈夫」と先送りにしていた自分を、少し恥ずかしく思った。

ペット保険に加入するためには健康であることが第一の条件であり、人の保険と同じように、持病があると加入しづらくなる。ただし、どの病気もすべてダメということではなく、指定された病気に罹患していたら加入できないケースや、持病があっても条件付きで加入できるケースもある。
一社で断られても、別の会社では加入できることもあるため、諦めずに複数社を比較してみることが大切だ。

ペットとの生活は、楽しいことばかりではない。病気、ケガ、加齢——いつかは必ず向き合う場面がくる。だからこそ、元気なうちに「もしものとき」を想像しておくことが、本当の意味での備えになる。ペット病院のかかりつけを決めておくこと、夜間対応の動物病院を調べておくこと、そしてペット保険の検討を先送りにしないこと。どれも「今日できること」だ。

ソラは今、窓際のお気に入りの場所で、梅雨の合間の薄い日差しを浴びながら眠っている。その寝息の音が、今日もちゃんと聞こえる。それだけで、十分だと思う。ペットとの生活の中で、当たり前の朝がいかに尊いか、病気になって初めて気づかされた気がした。

備えは愛情の形の一つだ、と今は思っている。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:UETSUJI TOSHIYUKI

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